デスクワーカーへのアンケートによると、何かしらの不調を感じている人が85%以上もいるというデータがあります。
立ち仕事より楽に思われがちなデスクワークですが、実は喫煙と同程度の健康リスクがあると言われています。
そこで今回は、デスクワークがもたらす弊害や体調不良の予防法などについてお話しします。
1.デスクワークによる弊害
デスクワーカーの多くが体の不調を感じているというデータに、大きな狂いはないだろうと思います。 私自身、長年デスクワークをしている中で、常々体のあちこちに凝りや痛みがありますし、同僚たちも同様の悩みを抱えているからです。
では、実際にデスクワークによる弊害にはどのようなものがあるのか、見ていくことにしましょう。
①肩こり・腰痛
パソコンに向かって座る姿勢は、猫背になりやい姿勢です。
背骨が丸まると、首周りや腰に大きな負担がかかります。
また、長時間同じ姿勢でいることで血流が悪くなります。
その結果、肩や腰の筋肉が凝り固まって、肩こりや腰痛が引き起こされるのです。
②肥満
脚の筋肉は、全身の筋肉の7割を占めている大きな筋肉です。
なかでもふくらはぎは「第2の心臓」とも呼ばれ、全身に血液を送るポンプの働きを担っています。 さらに、糖や脂肪をエネルギーに変える代謝にも大きく関わっています。
歩いている脚の筋肉は使われますが、座っている間は脚の筋肉は使われません。
当然、消費するエネルギー量は大きく減少します。
座っている時の脂肪燃焼率は、歩いている時の10%以下にまで落ち込むとされています。
そのため、脂肪が蓄積しやすくなり、肥満の原因に繋がるのです。
③動脈硬化
動脈硬化とは、血液内に中性脂肪やコレステロールがたまり、血管が硬くなる症状をさします。
先述の通り、脚の筋肉は体の大半を占め、血流や代謝に大きく関わっています。
座った瞬間から、脚の筋肉の電気信号は完全に停止して働かなくなります。
すると体の血流が悪くなり、血液はドロドロになっていきます。
血管は柔軟性を失い、硬くなります。 これが動脈硬化です。
動脈硬化による弊害は、心筋梗塞や脳梗塞、狭心症、糖尿病、高血圧などの発生リスクが高まってしまうことです。
④うつ病
デスクワークによる作業は、どうしても猫背になりがちです。
すると首の後ろの血管が圧迫されて、脳への血流が悪くなり、脳からのセロトニンの分泌が減少します。
セロトニンには、イライラや不安を抑える精神を安定させる作用がある物質です。
これが不足することで、精神的に不安定となり、うつ病になりやすくなるのです。
また、首の筋肉が凝り固まると、自律神経のバランスも乱れやすくなります。
活動時に優位になる交感神経が活発となり、体が常に緊張状態になって脳にストレスを与え続けてしまいます。 これも、うつ病を引き起こす原因に繋がります。
2.デスクワーク時の正しい姿勢
上記のようなリスクを減らすためには、まずは猫背にならないようにすること。
つなり、デスクワーク時の姿勢が重要なポイントとなります。
①椅子に深く腰かける
椅子に浅く座ると、骨盤が倒れて背中が丸くなります。
椅子には深く腰かけて、お尻と背もたれがくっつくようにして座ります。
深く座ると骨盤を立てて座ることができるので、背筋が伸び、猫背になりにくくなります。
②耳・肩・大転子が1直線になるように座る
デスクワーク時の理想姿勢は、横から見た時に耳・肩・大転子の3点が1直線になる状態とされています。 「大転子」とは、ももの付け根の外側にある出っ張った骨の部分です。
③肘と膝は90度
肘は机や肘掛けを使って90度にして、キーボードに自然に手が届くようにします。
そして膝も90度に曲げ、つま先からかかとまで床にしっかりつけてください。
足裏をしっかり床につけることで、腰にかかる負担が軽減できます。
④デスクワーク時の椅子の高さ
椅子の高さは、足裏が床にぴったりつく高さに調整します。
この高さにすることで、太ももの裏にかかる圧迫を軽減できます。
足が床につかない場合は、足台などを利用してください。
座面と膝裏の間は、こぶし1つ分あけて座ります。
⑤デスクワーク時の目線
画面を見上げる姿勢は、猫背やドライアイになりやすいです。
モニター画面の位置は、体の正面に置き、目線が少し下向きになるようにします。
顔とモニターは40㎝以上離して下さい。
3.デスクワーク時の作業時間
猫背対策の次は血流対策です。
同じ姿勢でいることが血流を滞らせる原因でしたね。
一番いいのは、座りっぱなしの時間を4時間未満に抑えることです。
とはいえ、会社に勤務している人にはほぼ不可能な話だと思います。
そこで次善の策として、長時間のデスクワークをする時は、1時間に1回は立ち上がることをおすすめします。 これだけでも、座りっぱなしによる悪影響を軽減できます。
もし席から離れることが可能であれば、少し歩くとさらに効果的です。
4.デスクワーク時のストレッチ
ストレッチをすることで、凝り固まった筋肉をほぐすとともに、さらなる血流改善が期待できます。 そこで、簡単にできるストレッチをいくつかご紹介しますね。
①上半身ストレッチ
<やり方>
(1) 座った状態で、背中で両手を組みます。
そして胸を広げるイメージで、組んだ手を上に引き上げ5秒キープします。
これを3回繰り返してください。
(2) 両手で、服の肩口にある縫い目を持ちます。
肩甲骨を動かすことを意識しながら、肘をゆっくり後ろに10回まわしてください。
②首こり・肩こり改善ストレッチ
<やり方>
(1) 両腕を20秒間、万歳をするように上に伸ばします。
(2) 首を右に傾け、右手を左耳に回して左の首をストレッチします。
反対側も同様にストレッチしてください。
(3) 右腕を左腕で抱えるようにして持ちます。
そして腰を左側にひねりましょう。
こちらも反対側も同様におこなってください。
③全身のストレッチ
<やり方>
(1) 椅子から立ち上がり、両手を体の前で組んで天井に向かって伸ばします。
(2) (1)の状態のまま、上半身を左右にゆっくり倒して戻す動作を、交互に数回おこないます。
(3)机に両手をついて、アキレス腱を片足ずつ伸ばしてください。
④脚のストレッチ
これは、貧乏ゆすりをするだけです。
小刻みに脚を動かすことで、筋肉に刺激を与えて血流を促す効果があります。
これなら、デスクワーク中でもできると思います。
ただし、貧乏ゆすりは周囲にいい印象を与える動作ではありません。
やり過ぎには気をつけてくださいね。
最後に
一見、体を動かす仕事よりラクに思われがちなデスクワークですが、体に与える影響はとても大きいのです。
デスクワークで何かしらの不調を感じている人は、ぜひ今回ご紹介した対策法を試してみてください。