冬になると、さまざまな感染症にかかりやすくなります。
感染症には細菌感染とウイルス感染がありますが、両者にはどのような違いがあるのでしょうか。
その違いや予防策・治療法を知って感染症から体を守り、寒い冬を元気に過ごしましょう。
今回は、細菌とウイルスの違い、それぞれの対策について解説します。
1.細菌とウイルスの違い
細菌やウイルスは、さまざまな病気を引き起こす原因として知られています。
この二つは似ているようで、実は性質がまったく違います。 両者の違いを正しく理解し、適切な予防や治療を行いましょう。
①細菌
(1) 細菌とは
バクテリアともいいます。
分類上は植物に属する単細胞の微生物です。
人間や他の生物に入り込み、細胞分裂で増殖します。 人の身体を蝕んだり、ものを腐敗させたりします。
細胞の大きさは、5000ナノメートル(1ナノメートル=1mmの100万分の1)と極小です。
(2) 細菌の特徴
細菌は、道端の苔の中、河川の水の中、庭の土の中、海底の泥の中、人の腸の中など、糖や養分と水がある環境下で増殖します。
細菌は増える時には2つに細胞分裂し、宿主の体内で居心地の良い場所に移動しながらどんどん分裂して増えることができます。
主な症状は、高熱、嘔吐、下痢、頭痛などがあり、体内で増殖している部分に限局して症状が現れます。
②ウイルス
(1) ウイルスとは
ウイルスは細胞体ではなく、DNAとそれを包む殻だけからなります。
他の生物の細胞エネルギーを利用して存在し、ウイルス単体では増殖できません。
ウイルスの大きさは、100ナノメートルで細菌よりも小さいです。
(2) ウイルスの特徴
ウイルスは、水や栄養分があっても単独で生存し、増殖できません。
他の生物(ネズミ、コウモリ、ロバ、ラクダ、ヒトなど)に寄生して自己複製することで増殖します。
人間の体の防御機構は、ウイルスとウイルスに感染した自分自身の細胞も攻撃対象にしてウイルスの増殖を抑えようとします。
その結果、体のあちこちに炎症をおこし、発熱や痛み、分泌過剰といった現象が起こるわけです。
ウイルスは細菌感染と違って複数の臓器に同時に感染しやすいので、症状は、咳、のどの痛み、鼻水など複数の症状が出ます。
2.代表的な感染経路
細菌・ウイルス両方とも下記の経路で感染します。
①接触感染
手指・食品・器具を介して接触することで感染します。
対策は手洗いとうがいです。
②飛沫感染
咳、くしゃみ、会話などで、飛沫粒子(5μm以上)により感染します。
対策は、マスクを着用して、飛び散った菌やウイルスを吸い込まないように予防します。
③空気感染
空中に浮遊して、空気の流れにより飛散します。
対策は、マスクを着用して、汚染された空気を吸い込まないようにします。
3.そもそも風邪って?
私たちが感染する風邪というのは、そもそもどんな種類があるのでしょうか?
風邪とは、かぜ症候群のことを言い、急性の鼻炎、咽頭炎、気管支炎など炎症疾患の総称です。
症状には、くしゃみ、咳、鼻水、発熱、のどの痛み、全身倦怠感などがあります。
原因は、細菌とウイルスがありますが、約9割がウイルスによる感染です。
①細菌性の風邪
風邪に関係する細菌には、溶連菌や肺炎球菌、黄色ウドウ球菌などがあります。
細菌性の風邪は一つの症状が強く、適切な治療をしないと完治しないのが特徴です。
治療には細菌の種類に合った抗生物質を使い、その細菌を殺さないかぎり風邪が治りにくいです。
そのため、病院で医師から抗生物質を処方してもらい、正しい用法・容量できちんと飲みきる必要があります。
途中でやめてしまうと細菌が消滅せず、その薬に耐性を持つことがあるので注意が必要です。
②ウイルス性の風邪
代表的な疾患にはインフルエンザやノロウイルスなどがあります。
細菌性の風邪と違い、咳、鼻づまり、のどの痛みといった症状が同時に出ます。
通常のウイルスによる風邪なら、2~3日で自然に治ってしまいますが、
子供や高齢者、抵抗力の弱い人がかかった場合や複数の症状がある場合には病院を受診した方がいいでしょう。
ウイルスには抗生物質を投与しても効果がありません。
ウイルスには、広く効くという薬はなく、例えばインフルエンザウイルスに効果的な薬は、抗インフルエンザ薬だけとなります。
4.インフルエンザとは?
インフルエンザはウイルス性の風邪の一つです。インフルエンザウイルスによって起こるウイルス性の呼吸器感染症です。
A・B・C型のインフルエンザウイルスがありますが、やっかいなのは、A型(Aソ連型とA香港型)とB型です。
また、近年、豚由来の新型インフルエンザウイルスA型が流行し、パンデミック(世界的流行)を引き起こし新たな脅威として報告されています。
インフルエンザは、人の鼻咽頭で増殖したウイルスが、飛沫感染で他の人の鼻咽頭の細胞に感染して発症します。
①どんな症状?
1~3日の潜伏期を経て、悪寒を伴う高熱が急激に出ます。
鼻水、咳、咽頭痛などの呼吸器症状、吐き気、嘔吐、下痢などの消化器症状、頭痛、関節痛も現れます。
②正しい時期の検査
病院で検査を受ける必要があります。
検査の方法は、インフルエンザ抗原検出キットの専用綿棒で鼻咽腔(鼻の奥)をぬぐい、およそ15分でA・B型の判別ができます。
発熱後12時間から24時間以上経たないと検査結果が陽性とならないため、発熱したからといって夜間にあわてて受診する必要はありません。
③治療方法
体内にいるインフルエンザウイルスの増殖を防ぐ抗インフルエンザ薬の服用が有効です。
服用していない場合と比べて、発熱期間が1~2日間短縮され、症状が除々に改善されます。
解熱後はすぐに体内からウイルスがいなくなるわけではありません。 解熱後48時間は自宅で療養することが必要です。
最後に
一言で風邪といっても、細菌性とウイルス性では大きな違いがあります。
ウイルス感染でもインフルエンザの場合は、適切な時期に検査を受けて治療をすることが必要です。 風邪に対する正しい知識を持って、適切な治療や予防措置をとるようにしましょう。