夜中に突然激しい頭痛が襲ってきて、市販薬を飲んでも一向に和らぐ気配がない。
できればすぐに病院を受診したいけど、この程度の症状で救急車を呼んでいいのかどうか、近所の目も気になって判断がつかない…
これは先日、私の友人が実際に遭遇した状況です。
このように救急車を呼ぶか否か迷った時にどうしたらいいのか、が今回のテーマです。
1. 救急車を呼ぶべきか
数年前、タクシー代わりに救急車を呼ぶ迷惑な人たちがメディアに取り上げられたことがありました。
仮病をつかって目的地近くの病院に救急搬送させ、病院に到着したら症状が治まったと言ってその場を立ち去るんだとか。
交通費を浮かせるために救急車を不正利用するという極めて身勝手かつ悪質な行為です。
その時は、そんな図々しい輩が日本にもいるのかと驚いたものです。
一方、それとは逆に、冒頭で紹介した私の友人のように、ひどい症状にもかかわらず救急車を呼ぶことをためらってしまう人もいます。
というのも、一般的に救急車を呼ぶ状況に遭遇することは稀であり、その判断基準が認知されていないからです。 また、日本人の特徴である謙抑性や近所への配慮も原因と考えられます。
家族がその場にいれば、タクシーで救急病院に運んでくれたり、救急車を呼んでくれることもあるでしょう。 しかし、一人暮らしや家族が不在の場合には、判断に迷うことはあり得ることなのです。
では、救急車を呼ぶか否か迷った時に、どうすれば正しい判断を下すことができるのでしょうか。
2. 救急車を呼ぶべき症状
あまり知られていませんが、実は救急車を呼ぶべきか否かの判断基準があります。
総務省のHPに「救急車利用マニュアル」というページがあり、大人と15歳未満の小児について別々の判断基準が例示されているのです。
たとえば大人の場合、お腹については、「突然の激しい腹痛」「持続する激しい腹痛」「吐血や下血がある」、吐き気の場合には「冷や汗を伴うような強い吐き気」といった症状が挙げられています。
これらに該当する場合には、国が救急車を呼ぶべき状況だと言っているので、迷わず呼んで構いません。
もっとも、「激しい」「強い」というのは人によって感じ方に差異があるため、現実の境界線は曖昧といえます。 自分がそう感じたのなら迷わず救急車を呼んでいいわけですが、ためらう方も少なからずいることでしょう。
そこで、そういったニーズに応えるために設けられている窓口があります。
それが、救急相談窓口です。
3. 救急安心センター「#7119」
「#7119」というダイヤルをご存知でしょうか?
救急車を呼ぶか否か判断に迷った場合に、アドバイスを受けることができる電話窓口で、消防庁の救急相談センターや委託民間会社の看護師、医師、救急隊経験者などが24時間365日対応しています。
病気の症状やケガの部位、状態などを伝えることで、救急車の要請が必要か否かを判断してくれます。
また、救急車の要請は必要ないものの医師の診察や処置が必要な場合は、その時点ですぐに受診できる病院を紹介してくれます。
夜間や休日は受診できる病院を自分で探すのは大変ですから、助かりますね。
このように「#7119」はとても頼もしいサービスですが、この記事を執筆している2018年5月の時点では、東京都・埼玉県・奈良県・大阪府・福岡県・宮城県の6都府県、北海道札幌市(周辺含む)、神奈川県横浜市、和歌山県田辺市(周辺含む)、兵庫県神戸市の4市にサービス対象地域が限定されています。
将来的には全国展開を目指しているということなので、今後徐々に対象地域が拡大していくことと思われます。
また、山形県・栃木県・香川県が「#7119」以外の番号で夜間に救急電話相談を実施しています。 この他にも消防本部や市町村単位で独自に電話相談事業を実施している地域もあるようなので、お住まいの地域に救急相談窓口が設置されているか、あらかじめ調べておくと安心です
救急相談窓口がある地域にお住まいの方は、判断に迷ったら電話相談してみてください。
一方、該当地域にお住まいでない場合には、直接119番に電話して大丈夫です。
119番に電話したからといって必ず救急車が出動されるわけではなく、症状を伝えることで救急車の出動が必要か否かを消防の方で判断してくれます。
4. 緊急でない子どもの発熱などは小児救急電話相談「#8000」
子どもの急な発熱などの場合には、「#8000」という専用の電話相談ダイヤルがあります。
子育てにおける保護者の不安の軽減と、安心して子育てができる環境づくりを目標に、厚生労働省が平成16年に開始し、平成22年に全国47都道府県で事業展開されたサービスです。
こちらは「#7119」と異なり日本全国で利用でき、小児科医師・看護師から子ども症状に応じた適切な対処の仕方や受診する病院などのアドバイスを受けられます。
ただ、対応時間は各都道府県ごとにさまざまで、19:00~22:00の地域もあれば、19:00~翌朝9:00までの地域もあります。
お子さんがいるご家庭は、いざという時のためにお住まいの地域の対応時間を確認しておくといいでしょう。
なお、「#8000」は夜間・休日に医師や看護師に相談できるダイヤルであり、緊急でない場合の利用が想定されています。
緊急を要する場合には、「#7119」または直接119番に電話してください。
5. 救急車を呼ぶと費用はいくらかかる?
救急車を呼んでも原則として費用はかかりません。
救急搬送の費用は全額税金でまかなわれているからです。
もちろん、救急車で病院に運んでもらう料金が原則無料なのであって、病院での診察代や治療費・入院費用が別途かかるのは言うまでもありません。
ただし、場合によっては病院から「特定療養費」という費用を別途請求されることがあります。
これは、100床以上の大病院に診療時間外に救急車で搬送されて治療が行われたものの、緊急性がなかったと判断された場合に、通常の治療費とは別に病院から請求される費用で、厚生労働省によってその金額は8640円と決められています。
そういった意味でも、「#7119」や119番でしっかりと症状を伝えることが大切なのです。
最後に
冒頭の私の友人は結局一晩中我慢し続けて、翌朝脳神経外科を受診したそうです。
MRI検査の結果、頭部の異常は見つからず、重度の肩凝りからくる神経の炎症という診断結果だったとのことでした。
結果オーライだったわけですが、もしこれが脳梗塞やくも膜下出血だったら手遅れになっていた可能性もあります。
それを回避できるかどうかは、本文でお伝えした内容を知っているか否かの違いだけです。
大切な家族やお友達、そしてあなた自身を守るために、ぜひ覚えてそして知らない人には教えてあげてくださいね。