私たちの生活に欠かせない存在である洗剤。
その洗剤には「石鹸」と呼ばれるものと「合成洗剤」と呼ばれるものがあります。
どちらも汚れを落とすための洗剤に変わりはありませんが、その違いをご存知でしょうか?
今回は、石鹸と合成洗剤の違いについてお話しします。
1.石鹸と合成洗剤の違い
①原料
石鹸は天然の動植物性の油脂を原料として作られています。
原料となる油脂には、牛脂・ラード・パーム油・なたね油・オリーブ油などがあります。
これらはほんの一部で、石鹸の原料は他にもまだたくさんあります。
これに対して、合成洗剤は石油が主原料となります。
そこに酵素、蛍光増白剤、漂白剤など仕上がりをよくするための副原料が配合されています。
最近では原料の一部にパーム油などを使用している合成洗剤もありますが、原料の一部が天然油脂でも合成洗剤であることに変わりはありません。
ちなみに、酵素は汚れの分解を促進させて洗剤の洗浄力を高める働きをする成分、蛍光増白剤は衣類に白い色を付けて仕上がりの白さを強調させる成分です。
②製法
(1)石鹸の製造方法
石鹸は先ほどご紹介した動植物性の油脂をアルカリで煮て作られています。
石鹸の製造方法には「鹸化法(けんかほう)」と「中和法」があります。
鹸化法とは、天然油脂を水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)で煮て反応させる昔ながらの製法です。 この製法で固形石鹸や粉石鹸を作ることができます。
中和法とは、天然油脂を水酸化カリウム(苛性カリ)で煮て、天然油脂から脂肪酸を取り出す製法です。 この製法で液体石鹸を作ることができます。
このような製法で作られた石鹸の界面活性剤は天然成分です。
そのため、成分は100%純石鹸となります。
(2)合成洗剤の製造方法
合成洗剤は主原料となる石油を高温・高圧など複雑な化学合成を行なって作られます。
このような製法で作られた洗浄成分を「合成界面活性剤」といいます。
ここにさらに洗浄力や仕上がりをよくするために、先ほど紹介した副原料が配合されます。
③ph
(1)phとは
phとは水溶液の酸性・中性・アルカリ性といった性質をあらわす単位です。
この数値は0~14まであり、「ph7」が中性になります。
これより低い数値を酸性、高い数値をアルカリ性と呼び、phの数値の大きさによって成分表示は以下のようになります。
・ph3.0未満 → 酸性
・ph3.0以上 ph6.0未満 → 弱酸性
・ph6.0以上 ph8.0以下 → 中性
・ph8.0以上 ph11.0以下 → 弱アルカリ性
・ph11.0以上 → アルカリ性
数値の大きさによって性質の強弱が表されています。
この性質は、洗剤の品質表示方法で記載することが義務付けられています。
(2)石鹸のph
石鹸は弱酸性と強アルカリ性を組み合わせて作られており、すべて弱アルカリ性です。
phの数値は大体9~11となります。
(3)合成洗剤のph
合成洗剤の大半はほぼ中性で、phの数値は6.0以上~8.0以下になります。
ただ、合成洗剤は用途によって酸性やアルカリ性の助剤を加え、酸性やアルカリ性に変えることが可能です。
弱アルカリ性以外は合成洗剤と思っておけばいいでしょう。
2.石鹸の長所
①洗浄力が高い
衣類などについた汚れは、皮脂などの酸性の汚れが多いです。
この酸性の汚れを落とすためには、反対の性質であるアルカリ性が効果的です。
弱アルカリ性の石鹸は汚れをしっかり落とし、洋服本来の白さに仕上げてくれます。
②環境に優しい
石鹸は排水後、水と炭酸ガス(二酸化炭素)に分解されます。 また、石鹸カスは微生物のエサとなります。
そのため、石鹸は水質や生態系に影響を及ぼしません。
3.石鹸の短所
①水に溶けにくい
石鹸の成分は水に溶けにくい成分です。
そのため、水の中に含まれるカルシウムなどと結合して石鹸カスになりやすいです。
そして、この石鹸カスをエサに菌が繁殖してしまう可能性があります。
このカスが衣類に付着したまま残ってしまうと、黄ばみや黒カビ、においの原因にも繋がってしまいます。
なので、石鹸はしっかり溶かして使わなくてはなりません。
②しっかり泡立てなくてはならない
石鹸は高い洗浄力があります。
ですが、この洗浄力はしっかり泡立った状態でないと効果が発揮されません。 泡がなくなった時点で、洗浄する力はなくなってしまいます。
しっかり泡立てるには手間がかかりますが、事前に泡立てるのが理想です。
4.合成洗剤の長所
①水に溶けやすい
合成洗剤は石鹸とは正反対の構造になります。 水に溶けやすい成分が使用され、石鹸カスもできません。 泡立てる必要もないので、手軽に使えるのが魅力的です。
②仕上がりにプラスαの成分効果がある
合成洗剤は、界面活性剤にプラスして助剤を配合しています。
そのため、衣類の仕上がりを白くしたり抗菌効果などを得ることができます。
③洗浄力が衰えない
合成洗剤の成分は、水に溶けてもなかなか分解されません。
そのため、水に溶けて洗剤濃度が低くなっても洗浄力自体は落ちません。
5.合成洗剤の短所
①石鹸よりも洗浄力が低い
洗浄力の持続性はありますが、合成洗剤の大半は中性になります。
なので、基本的に洗浄力は石鹸のほうが優れています。
②環境に影響を与えてしまう
合成洗剤の界面活性剤は化学合成によって作られているため、完全に分解するのには時間がかかります。
この界面活性作用が完全になくなるのには丸1日~数日かかり、さらに、合成洗剤の成分には排水後に川や海に留まってしまうものもあります。
そのため、成分が蓄積され続けてしまうと、水質や生態系に影響が及ぶ可能性があるのです。
最後に
石鹸と合成洗剤、どちらも汚れを落とすものに変わりはありません。 しかし、成分などはまったく別物だったんですね。
我が家は主人がスポーツをしていたり息子が小さいので汚れ物を洗濯する機会が多いです。
その時にまず固形石鹸で洗ってから合成洗剤で洗濯をしています。 白い服や靴下は特にキレイになるのでオススメですよ。