舌を見ることで健康状態が分かることをご存知ですか?
実は、舌はその人の体質や内臓の状態を表す鏡と言われているのです。
では、どういった点を見ればいいのでしょうか。 今回はこの舌診(ぜっしん)について解説します。
1.舌診とは
舌診(ぜっしん)とは、舌質(ぜっしつ)と舌苔(ぜったい)を観察して健康診断をする方法です。
舌質とは、舌本体の形状やその色調のことです。 舌の色や形、潤いを重点において診察をします。
一方、舌苔とは、舌に付着する白い苔状のものです。 この付着物の色や厚みなどを診察します。
いったいなぜ舌で健康状態が分かるのでしょうか。
それは、舌に血管が集合していて、血液や体液の質、過不足などを診てとることができるからです。
東洋医学や中国医学の診断方法の中で、舌診は重要な項目となっています。
中国医学では基本となる診断方法が4つあります。
それは望診(患者の動作や容姿を観察)・聞診(声や臭いを観察)・問診(病歴や症状を質問)・切診(体に触れて診る)からなる4診です。
舌診は、目で見て診察をする方法なので4診内の望診に分類されます。
2.舌診の方法
①舌の色
先述の通り、舌にはたくさんの血管が集合していて、血流の変化によって舌の色も変化します。 そのため、舌の色は体調変化を把握する1つの手段になるのです。
・淡紅色 … キレイなピンク色で正常な舌の人にみられます。
・淡白 … 舌体が白っぽい状態をさします。 白っぽいほど寒証(寒がり)で、手足の冷えや貧血、下痢、風邪をひきやすい傾向があります。
・紅舌 … 舌体が赤い状態をさします。 赤みが濃いほど熱証(暑がり)で、のぼせやほてり、口内炎ができやすい傾向があります。 また、潰瘍などの消化器系の炎症を伴う場合もあります。
・紫舌 … 舌全体が青紫や赤紫の状態をさします。「瘀血(おけつ」をもつ人にみられます。
瘀血とは、体内の血液がドロドロの状態で血流が悪くなっている状態のことです。 症状としては、頭痛、めまい、イライラ、便秘、肩こり、生理不順があります。
②舌の形
体内の水分量や栄養バランスに応じて舌も痩せたりむくんだりします。
そのため、舌の形で体内の水分量や栄養状態を確認することができます。
・胖大舌(はんだいぜつ) … 舌が口幅ほど大きくぼてっとしています。
・歯痕舌(しこんぜつ) … 舌の横側に歯の痕が残っている状態の舌をさします。
胖大舌・歯痕舌は気虚証と言われ、エネルギー不足を表しています。 特に消化器系の機能の低下が考えられます。
・裂紋舌(れつもんぜつ) … 舌の中央部分などに亀裂がみられます。
・痩薄舌(そうはくぜつ) … 舌が痩せて全体的に細く先端が尖っています。
裂紋舌・痩薄舌は血虚証と言われ栄養不良を表しています。 水分不足の状態でもあります。
・点刺舌 … 舌表面にあらわれるブツブツとした隆起がある状態です。
赤みを持った点刺ができることから、木苺舌(きいちごした)と呼ばれています。 不安神経症、不眠症など精神疾患をもつ人にみられます。
また、女性の場合には、自律神経失調症や更年期の可能性もあります。
③舌苔の状態
舌の細胞の角質に細菌や汚れがたまることで苔が生えたように見えます。 これが舌苔です。 多くの場合、白っぽい色や黄色をしています。
<色>
・白苔 … 内臓(特に胃)に冷たい水分が多い(寒湿)と白く分厚い苔があらわれます。 逆に水分量が少ないと白い苔が亀裂が入った状態であらわれます。
・黄苔 … 体内に溜まった余剰水分に熱が加わる(湿熱)と、黄色い舌苔があらわれます。
消化器系の湿熱によって水分代謝が悪くなり、炎症が起こりやすくなります。
黄苔は、口内炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胸やけ、胃酸の上昇など、口腔粘膜や消化器の疾患を持つ人にみられます。
<苔質>
・薄苔 … 厚さが薄く、全体が透けて見える状態です。 正常な舌は薄く白く苔がバランスよく広がっています。
しかし、苔が極端に薄い場合は体内の水分不足や栄養不足が考えられます。 ストレスなどによる神経衰弱の人に多い?血現象や虚弱体質の人にみられます。
・厚苔 … 苔が分厚く舌が見えない状態です。 内臓に未消化物や水分量が多いと苔が分厚くなります。 また、水毒症の可能性も考えられます。
水毒症とは、冷たい飲食の過剰な摂取で起こるもので、食欲不振や下痢、疲れやすいなどの症状があらわれます。
・膩苔(じたい) … 透明な苔が油を帯びたようにべっとりしている状態です。 このような場合、体内の水分代謝障害をあらわしています。
慢性気管支炎、喘息、むくみやすい、アレルギー性鼻炎、花粉症などの人にみられます。
・地図苔 … 苔がところどころ剥がれおち、世界地図のような状態をさします。 この場合胃が弱り体内に熱が溜まっていることをあらわしています。
また、栄養バランスが悪く、体内のビタミンやたんぱく質が欠乏している可能性も考えられます。 慢性的な下痢、胃腸炎、アレルギー体質、アトピー性皮膚炎の人にみられます。
最後に
普段意識して舌を見る機会は少ないと思います。 しかし、舌は昔から健康状態を把握する1つの手段として用いられてきました。
誰でも簡単にできるので、体調の変化を感じたら舌の状態を確認してみてはいかがでしょうか?